嘘ばっかりついてる調子のいい編集者が、電話ボックスで脅迫される話。
約80分というかなり短めの映画なんだが、冒頭から電話のシーンでわけのわからぬ固有名詞が連発されかなり面食らう。いきなりこの焦り様はなんなんだろうと見ていると、何のことはないこれらワード群には意味が無く、ただステュがそういうせわしない人間なんだという状況説明だけだった。
というのもこの映画の構成は、電話シーン~電話ボックスにたどり着くまでの数10m(数100m?)に彼の嘘つきキャラをねじ込んで、あとは実質電話ボックスでのシーンが続く。これは例えば、冒頭30分かけて「ステュは嘘つきで成り立っている人間だ」というのを描き(家とかオフィスとかカキタレとかで)、その後電話ボックスシーンだとして都合100分の映画にすると緩急の緊迫感がまったくでないのだろう。だって正直この映画は緩急だけなんだから。なので、半ば見てる側を置いていくほど冒頭に畳みかけるのは、全部見終わった後では正解だったのではないかと感じる。
電話ボックスでの理不尽なやりとりが展開される中で、最初は「誰が犯人なのか」が肝になるのかなあと思って見ていたが、結局これは電話マンに踊らされるステュの心理変化+刑事とのやりとりを楽しむ映画なんだと徐々に感じ始めた。中盤過ぎたあたりから自分が電話マン目線でステュを見ているのに気付いて、全くステュに同情する気が起きないのだ。むしろ、嘘で塗り固めた野郎が虚実入り乱れた電話マンの口上と実力行使に圧倒されているのを見ながら結構楽しんでいる。
要するにプレイだ。電話マンはステュという格好のネタ満載野郎を徹底リサーチし、この電話ボックス撤去記念として最初で最後の”ステュ”プレイを楽しんだにすぎない。そしてそれに観客(少なくとも俺)も乗っかったわけだ。
なので、ピザ屋がフェイクだという事は瞬時にわかったが、まさか最後に実物を出すとは思わなかった。あー電話マン的には、ステュにびっくり大どんでん返しを味わわせ、そのびっくり顔を拝んで初めてプレイ終了なのかもしれんな。しかもジャックバウアーて。なんでだよ。