記憶喪失になったボーンが自分は何者かを追求していく話。
一言で言えば「なんじゃこりゃ」。中途半端なアクションに、中途半端なカーチェイス、中途半端なラブ、中途半端な陰謀、もうこの映画全体に対して、ちゃらんぽらんに「ちゅう~とはんぱやな~」とダメ出しして欲しい。
まずはアクション。主人公のボーンは、ロボコップやターミネーターほどではないが一応超人設定されていて、そこら辺のポリ公はもちろん、同じ殺し屋の中でも圧倒的に強い。なので、アクション自体が見せ場ではなく「ストーリーの進行上なんかしらんがアクションするような状況になってしまった」という感じで、はっきり言えばしょぼいのだ。、ドラマの展開上超強力なライバルドーピング野郎が現れ、しつこくボーンを追い回すような展開ならば、よくあるパターンではあるがそれはそれで勝手に面白くなるし、まあこれだけでも見応えあるものにはなる(「逃亡者」とかはそのまんまだし)。それがなく殺し屋はヘボいのが何人も自動的に送られてくるので、盛り上がりどころがまったくない。ボーンと殺し屋どもの因果関係が希薄というのもでかい。しかも、あの殺し屋紹介シーンの部分はゲームやアニメを想起させるような映像になっていて、作っている側はかっこいいと思ってるのかしらんが、なんかダサい。
次にカーチェイス。2003年の映画らしいが、こういう年になっても未だカーチェイスを続けるのは最早制作側がやりたいからとしか思えん。あんなもんに今更ドキドキするのは映画初見の中高生ぐらいだし、「結局逃げ切るんだからさっさとやれ」的な思いは絶対ぬぐえない。前見た「60セカンズ」ぐらい、カーチェイス自体が主題となっている映画ならまだ見応えあるんだが、この映画の場合は大昔からある古来伝統のカーのチェイスが繰り広げられているだけで、うんこだ。
次にラブ。まず女がいかん。個人的にはどうもあの長めの馬面にファン・ニステルローイの影がちらついて「かわいい」とも「美人」とも思えなかった。して二人の感情の煮詰まり方も特に描いてはおらず、結構急に好きになってるらしい。それおめえ話の都合上女をこれからも連れて行くため、無理矢理ラブシーンしてねえか。
次に陰謀。この映画の特徴でもあり、大きな悪い部分でもあると思うんだが、映画冒頭からすでに黒幕がわかっているというのは何なんだろう。これだとボーンが自分のアイデンティティを求めていって最終的にCIAに行き着くまでの謎めいた感覚が希薄になるし、どうせ「まだ捕まらねーのかよ奴は」とか言ってるだけだったから別に隠しておけばよかったのではなかろうか。
とこのように、映画全体に対して色々な部分でひっかかる箇所があり、これが全体を通していい映画であればそういう部分は差っ引いて見るというかむしろ気にならなくなるのだが、この映画では気になりまくったということで、そういう映画だったと言うことだ。結果的に自分の中に残ったのは映画の内容ではなく「今の時代になぜこの映画を作ったのか」という点だ。