都会のアリス ★★★★☆

アメリカからドイツへ帰郷する男が偶然知り合った女性に娘を託される話。

ヴィム・ヴェンダース初期の作品ということでもちろんテーマは旅、ロードムービーである。彼の描く旅は基本楽しくない。総じて虚無感や、未達成・敗北などという、旅が本来備えている非日常への期待というよりは、非日常へ挑戦した結果ダメだった者の、「行き」というより「帰り」の印象が強い。

男は雑誌かなんか(イメージとしては飛行機に乗ると網に挟んである機内誌の旅特集)の取材でアメリカの印象を捉えようと試みたものの、多様な印象を表現できないでいる。アメリカからドイツへ向かう行程は、娘と関わることで移動から旅となり、その日暮らしに近かった男の時間は、娘の家探しで意味を持つ。この変化はアメリカでは獲得出来なかった実体験のイメージ化を、必要から導き出すことにつながった。移動・食事・休憩・宿泊一切に子供の事を考えた意味が生じ、二人の関わりで互いに生気を得ていく過程は面白い。

映画であるから、「やがて家は見つかり二人は離れる」というゴールは早い内に想像できる。しかしその過程をこれほど魅力的に描くのは、静寂が見ている側にも心地よく作用するからだろう。ほんの少しだったが、二人が親子のように振る舞う時間、体操や写真を撮るシーンはこれからも記憶の断片に残りそうだ。つーか卑怯ではあるが、オーディションで映画の主役級に抜擢されるほどのポテンシャルを持った少女が、小憎たらしいと、必然的に魅力的である。

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