スター俳優・銀ちゃんと、大部屋俳優・ヤスの話。
オリジナルが舞台作品ということで、映画とは言えかなり舞台を意識した作りになっている。俳優の演技は大袈裟で外連味たっぷり、BGMも押しつけがましく、クライマックスシーンも一画面に収まる。舞台はよくわからんが一週間とか長いと一月とか上演するようだが、階段落ちは毎回実演したのだろうか。
この押しつけがましいケバさは、結果的には映画全体の熱気となってプラスに作用している。なんつーか、あの奥崎謙三の「わかってやってるガチさ」に通ずるガチさというか、最後劇中劇のネタ晴らしでもわかるように、演技することを強調してみせたのが、テンポの良さに繋がっていた。
スターである銀ちゃんはシンボル、何が何でも存在を守るべき対象である。大部屋はスターのためにいるし、その言葉は絶対的、わたくしを捨てねばならない。だから強く結びついているように見えても、互いの心根は理解できない。階段落ちの前、ヤスが意図的にゴネてみせたのも、この大勝負の前に銀ちゃんに存在をアピールしたかったのかもしれない。「ヤス、あがってこい!」でケバさはピークに達するが、ここまでくると俺自身は性格的に引いてしまった。熱さが空回りせず全体の推進力となっている良い映画だった。