大型トラックで移動しながら映画を上映する男と、自暴自棄になった男の旅話。
見終わるのに3日かかった。180分の映画なので通常の映画の1.5倍のボリュームがあるが、それ以上に体感時間がものすごく長く感じる映画だ。見始めては退屈になり途中で止めて、またしばらくして見て、止めて、そういう風に見ても、この映画は良いように感じられる。
しかも見終わっても何も残らない。何の追加的知識を得られるわけでもないし、もちろん感動するわけでもないし、印象的な何かがもたらされる事もない。ただただ浪費、このゆったりした時間に身を委ねるのが、本作との関わり方だ。
しかし本作のように、映画そのものにマジメに取り組んでいる作品はあまりない。例えばハリウッド、その作品は多かれ少なかれ、消費できるように”制作”される。消費に値する明確な何かが必ずある。それはストーリーだったりキャストだったり、映像の奇抜さだったりと、まあ色々あるが、確実なシンボルがなければならない。
ロードムービーということで旅に例えるなら、それはまるでパック旅行だ。シンボリックな観光地があらかじめ決まっていて、一旦そのパック旅行に参加すると必ずそのシンボルに到達できる。それをどう受け手が感じるかはそれぞれだが、とにかくシンボルを拝めるのである。ヴィム・ヴェンダースの映画は、その点行き当たりばったりの無計画旅行と言ったところか。
無計画ゆえ無駄が多い。なんで野グソシーンをあんなにマジメに撮影するのか。このダルさとマジメさは、映画そのものが持つ映像作品の魅力を感じるには良いと思う。ただほんと、退屈で長い。それもコミで面白い。