慶應義塾大学通信教育課程の噂:評価(その1 システム)

 先日、1月の科目試験が返ってきた。結果は、まず無理だろうと思っていた統計学がAだった一方で、前回は落としたが今度は大丈夫だろうと思っていた人口論が再びDという、二重の予想外な結果だった。おかげで4月受験予定の科目が1つ受けられなくなった。さらに、これまでささやかな自慢だった、レポートも試験も同一科目を2回落としたことはないという記録も途絶えてしまった。残念。
 気を取り直して、前回からちょっと間が空いてしまったが、今回からは単位取得が難しいと言われている慶應通信の評価について考えてみたい。今回は、その単位取得のシステムについて考えてみる。
 まず、科目を履修して単位を修得するまでの過程をおさらいしてみる。慶應の通信教育では、年度初めの履修登録というものがない。自分のテキスト配本年次(実質的な学年)を確認し、履修可能な科目であればレポート課題に従ってレポートを提出し、それが受け付けられた時点で(評価とは無関係に)履修と見なされるようだ。塾生ガイド(年度初めに配布される通信教育課程生への案内冊子。学生便覧。)を筆者が読んだ限りでは「履修」の定義は書いていなかったが、不可レポートの再提出期限が切れてから再度レポートを出し直すことを「再履修」と呼ぶことから、おそらくレポートを提出することをもって履修とするのではないかと思う。他大学では通信教育でも年度初めに履修登録を行う必要がある大学もあるようなので、履修についての制限は緩い方だと思う。
 ちなみに、この「登録をせずとも履修」というのがもし通学課程で可能であるならば、それは相当単位取得が楽な大学だと言ってよい。筆者が以前卒業した通学課程の大学は「卒業が楽な国立大学東の横綱」などと在学当時に揶揄されていたが、その理由の一つは、時間割が全部埋まるまで好きなだけ履修登録ができるとことにあった(ただし、筆者入学の前年からだったと記憶している)。しかし、筆者の2学年下から年間の履修登録科目数に再び制限が設けられ、これだけでかなり単位取得が厳しくなったようだ。そして、この大学をしのぐ西の横綱と呼ばれていた京都大学は、同期入社の卒業生に聞いたところでは履修登録すらないという話だった。ちなみに去年読売新聞が実施した調査では、京都大学の4年卒業率は92.3%だそうで、平均の84.6%よりかなり高い。この履修登録という縛りがいかに単位取得を難しくしているかを物語っていると思う。
 このレポート提出(=履修)によって科目試験の受験資格が得られる。このとき、レポートの評価は関係ない。戻ってくるまで待つ必要もない。事務局に受け付けられていれば受験可能なのだ。しかも、科目試験合格後にレポートがD(不可)で戻ってきても、6ヶ月後の再提出期限以内にレポートを再提出すれば、科目試験の合格を取り消されることもない。これも他の通信制大学によっては、科目試験の受験資格をレポート合格に限ったり、レポートが不合格であれば科目試験の合格を取り消されるところもあるようなので、制度的にはかなり緩い方だと思う。
 その代わり、と言っては何だけど、科目試験の受験時に若干の制限がある。科目試験は3ヶ月に1度、土日の2日間に分けて実施されるのだが、その際に科目群としてA~Fまでの6群が設定され、時間割は各群ごとに1科目ずつ試験が実施されることになる。つまり、土曜の1限はA群の試験、2限はB群、3限はC群、日曜は各時限それぞれD~F群といった具合だ。そしてそれら科目群内の科目が別の群に移動することは基本的にはない(少なくとも筆者の入学以来無いと思う)。このため、ある履修科目が試験で落ち続けて合格できないでいると、いつまでたってもその群の他の科目を受験できないことになる。
 例えば、筆者は今回F群の人口論を落としたが、これによって既にレポートを提出している同じF群の会計監査が次回試験で受けられなくなった(もちろん、人口論をいったん休んで会計監査を先に受けてもよいが、どちらにしても両方受けることはできない)。
 また当然ながら、1回の試験での受験科目数の上限は6科目となる。これを考えると、実質的に履修縛りはあると言ってよいだろう。
 というわけで、結論としては、一見履修の縛りが緩く履修が楽なように感じられるが、よくシステムを眺めると、きちんと履修縛りに値する仕組みが組み込まれており、それほど楽でもないことがわかる。
 次回はいよいよ「難関」という噂の根幹をなす、レポート・試験の課題と採点について考えてみる。