2010 FIFAワールドカップ 南アフリカ 終了

スペイン優勝

ぼーっと見て良かった。結果的にワールドカップを楽しめたのだからこの見方は正解だった。どんなに素晴らしい能力を有したプレイヤーであっても、1ヶ月かそこらで作られた即席チーム同士の試合では本来の実力は発揮されない。サッカーはチームスポーツであり、チームとして機能して初めて、個の能力が発揮される余地が生まれる。数々のスタープレイヤーが窮して単騎で突撃して散る様を何度見たか。数年かけて熟成された100点満点近いチームにおいて、メッシやロナウドのような100点前後のプレイヤーは機能する。80点の代表チームでは、チームそのものがボトルネックとなってしまう。

だがそれこそがワールドカップ・代表チームの見方だと、今回のぼーっと見たワールドカップを通して感じるようになっていった。100点満点同士のタイトさとはまた違った、80点同士のブレや遊び幅が、サッカー的な番狂わせを生み出す。もちろんそこに魅力が生じるようになったら元も子もなく、あまり望ましくない状況だが、短期集中トーナメントではまた一つの魅力のように感じられたのが正直なところだ。

そんな中でチームとして機能し、その上で個の能力が発揮されたスペイン・ドイツ・ウルグアイあたりが最後まで残ったのは順当な結果だと言える。スペインはアラゴネスがEUROで作り上げたチームをデルボスケが引き継ぎ、またカプデビラ・トーレスを除く先発固定メンバーがバルサとレアル。ドイツは前回のクリンスマンのチームの実質的コーチであったヨアヒム・ルーフがそのまま4年かけてチームを熟成させていた。ウルグアイは南米という事情柄、元々守備(=組織力)の実力は高く、今回たまたまそれにフォルラン・スアレス・カバーニのような優れたフォワードがいただけだ。

逆にフランスは個が大勢いてもチームとして機能できなかったし、イタリアには個がいなかった。アフリカは、地元の利を自らブブゼラの騒音でフラットにした。あの楽器はまさしく騒音で、果たして応援したいのかブーイングなのかわかりずらい。まあJリーグ初期に「オーレーオレオレオレー」つってラッパ吹いてた日本人に言われたくないだろうが。

また希有な個はいないが、チームとして機能したスロバキア・日本・韓国・アメリカ・チリ・パラグアイが大会の帰趨を大きく左右した。グループリーグ、スロバキア・アメリカは劇的な方法によって、また日本・韓国・チリ・パラグアイはチーム力の結実としてそれぞれRound16に進出した。中でもスロバキア – イタリアは、イタリアの凋落ぶりを見事に示した、しょっぱい試合だらけのグループリーグの中でもワールドカップらしいブレ幅の大きい白熱した試合だった。

これは決勝仕様の”ジョブラニ

しょっぱい原因は何か。ジャブラニ。確かに本田やフォルランが蹴った、野球のナックルボールのようなフリーキックを生み出し、流れの中のシュートでもキーパーの逆を付いたりして(日本的にはオランダ戦の決勝点)、そういう意味では当初の狙いも一部達成されている。だがほとんどのシーンではボールの扱いづらさに多くのプレイヤーが難儀し、見る側にとっても可能性ゼロのシュート・クロス・フリーキックが目立って興が削がれ、結果的にはボールの”改良”が裏目に出てしまった。

急造スタジアム。今大会がおそらく全試合HD画質で放送された初の大会だと思うが、SDと大きく違うのは選手の顔がよく見えるではなく、芝目が結構よく見えることだ。会場名を把握して試合を見なかったのでどこがどれほどとは言えないが、とにかくグラウンドは全体的にボコボコ、試合後は穴ぼこだらけというのが印象に残った。

負けない意識。優勝候補チームのプレイヤーが、リーグ戦の疲労を残したままワールドカップに突入したため、「グループリーグを利用しながら調子を上げていく」というイタリア伝統みたいな方法を採らざるをえず、それでも勝ち点は積み上げねばならないので「先制点を奪われないこと」を最優先していた。それが結果的に調子の上がらなかったチーム、そもそも実力がなかったチームを生み出し、各試合かなりばらつきが生じた。優勝したスペインも初戦スイスに負けている。それも攻めて攻めて点が取れず、スイスの一つのカウンターで敗れるという典型的な方法で。地上波では放送されなかったようだが、全64試合の中でも、負けない意識の薄い三決・ドイツ – ウルグアイが試合としては一番面白かったという皮肉。勝つ意識を持てれば攻撃的な試合をできるチームなのに、負けない意識が作用してしょっぱくなってしまった。

決勝トーナメントに入ってからは、調子も上がり面白い試合が多かった。全て好ゲーム。それぞれに、サッカーがもつ様々な魅力を感じられた。中でもオランダ – ブラジルは、リスク管理や試合マネジメントという側面において、何度見ても面白いと思う。最高の出来だった前半のブラジルが、ハーフタイムでオランダをなめて、対するオランダは決死の覚悟をもって後半突入、アクシデンタルな失点~うやむやの決勝点~メロの退場、つまらないブラジルを選んだドゥンガの哲学が崩壊する瞬間。その顔。ダサいファッション。よく言う「流れ」の重要性や、結局サッカーはメンタルスポーツであることが、実証された試合だった。

そうしてサッカー的な勝利で決勝まで進んだオランダと、優勝候補が順当に調子を上げて、今大会ベストチームのドイツすらも退けて進んだスペインのファイナルでは、パススピードとトラップの正確さで両チームのレベルの高さはよくわかった。結果スペインが優勝したが、この試合もオランダのゲームマネジメントが展開を左右した。

個々のタレントを見ると、攻撃側ではオランダもスペインも、方法は違うが遜色ない。対して守備(組織)側では明らかにスペインに分がある。バルサの2センターと世界最高のGKカシージャス。中盤はバルサのトリデンテにXアロンソの展開力。対してオランダはどっかの馬の骨的センターとGK、中盤は世界最高のスナイデルに壊し屋二人。五分の勝負をしては勝ち目がないと判断したオランダが、ラフプレイを連発して試合を壊した。いつものパス回しが悪質なファウルで潰されリズムが生まれないスペインに対し、オランダの速攻は効果的だった。

だが結果的には、この作戦がオランダに不利に作用したかもしれない。それも含めての賭けだったかもしれないが。イエローカードの判定はほぼ順当に感じた。オランダは主審とも駆け引きをしていた。中には一発レッドでおかしくないファウルが、ワールドカップファイナルという性質上、イエローに止まったものもある。90分終了時のカード数はオランダ6・スペイン3。延長では合計5枚出た。その中で延長後半にハイティンガが累積退場。ファイナルの主審を務めたのはハワード・ウェブのイングランドセット。4thに日本の西村さん。プレミアリーグを見る人はよく知っているが、ハワード・ウェブははっきり言ってザルだ。終了間際の重要な場面で、ザルっぷりを存分に発揮した。だが大会を通じてよくわかるように、それもサッカーである。

ランパード幻のゴール

テベスのオフサイド

審判の誤審問題も色々出たなあそういえば。ランパードのシュートやテベスのオフサイドで大騒ぎしたのもなんか懐かしい。いやそういう問題じゃない。ランパードの幻のゴールについては後日談というか、過去の因縁話があったりして、本当に面白い。1966イングランド大会ファイナルでの疑惑のゴールが、44年後に解消されるとは、なんてドラマチックなんだ。そういう文脈で理解もできるが、これまたそういう問題じゃない。

判定に機械を導入するかの是非は昔からあって、FIFAもアンダーの大会でボールにチップを埋めたりゴールラインに専用の審判を配置したりして実験した結果、「現時点では必要なし」と判断している。詳しい経緯は知らないが、個人的にはサッカーのオリジナルから考えて、必要であれば機械の導入も審判増加も積極的に行うべきだと思う。つまり本来サッカーに審判はいなかった。オフサイドもなかった。選手交代も出来ず、骨折したままプレイした人もいたらしい。またむしろ審判がいない方が、互いに気をつけていたのでファウルも少なかったという話もある。

ルールの整備を行ううちに、これら追加ルールが設けられたわけで、であれば金科玉条ではなく不都合であれば柔軟に変更するべきだ。前述した二例の場合、ランパードのゴール見逃しについては、ゴールラインという定点観測なので、むしろ機械で厳密にやった方が絶対に良い。具体的にはゴールラインを完全に割った時点で主審に信号が届くとか。なんならGPSでミクロ単位でゴールラインを捕捉してもいいだろう。ただテベスのオフサイドは現状機械では難しい気がする。今のルールでは「ボールに積極的に関与したかどうか」がオフサイドの判定基準なので、その曖昧さを機械で判断するのは困難だし、ゴールラインとは違ってオフサイドラインは絶えず上下動するため捕捉が難しい。

まあー、、、ざっとこんな感じかな。最初に書いたが全然期待してなかったのもあってか、終わってみればかなり面白い大会だった。この感じは試合のクオリティだけでなく、その周辺も併せてのものだと思う。以下気になった点を挙げてみよう。

・今大会のスカパー
富樫洋一さんに捧げる番組

スカパーで見るのは2002年から3回目だが、それぞれに(地上波と比べると金銭的しょぼさは感じられるが)周辺の内容が充実していた。2002年のジャーナル、2006年のデータスタジオ、そして2010年のジャンルカなうと、誰もが楽しめるサッカー番組を提供してくれた。

長くなりそうなので以下列挙 =特にインプレッシブ

マラドーナ
初戦の勝利後会見でりんご喰ってたマラドーナ

-ゲイではありませんよ。ベロニカです。金髪です。
-マンクーソ・エンリケとのトリオ
-十字7回
-サムエルにウザがられる
-どう見ても酔っぱらい

オシムじいちゃん
日本敗退決定直後のオシムじいちゃん。スーツとネクタイは日本仕様

-・・・Fu
-エゴイストがいる
-私も戦っていましたよ。世界が終わったわけではありません。
-バルカンシンドローム
-オシムTwitter
ハニュウか?
-オスシ
-野々村の切り込み

・Ke-Nako-
・ブブゼラうるさい
・ジャブラニクソすぎ
・ワールドカップ史上最悪の誤審 → 1966年ハーストの因縁
・パッカくん
・桃色ハピニャス
素人目線っちゃあ素人目線
・amie VS ミック・ジャガー
・タコのパウルくん
・子供店長とかいう糞餓鬼
・エグザイルの歌覚えたくない
・アンビシャス覚えたくない
・見せてくれ内田 ←見れない
・アクエリアスの一人勝ち
・HDのダンディ
・サムエルのブロック
・チョンテセ号泣
・本田ドヤ顔
・ドメネク死亡
・イタリア死亡
・バティ盗難
・オリベイラのガン見
・青いセーター
・娘のコーディネイト
ドイツの変化
・ハムシクだけパンク
・ドノヴァンかっこよすぎ

マンUにいた頃がなつかしいフォルラン
・邪悪なお兄さんフォルラン
・フォルランの漢気
大会前に注目していた平畠はさすが。乗っかり芸能人とは違う。
スアレスのレシーブ
・ギャンのPK
・ギャンとザクミ
・ごっつぁんパレルモ
・テリー鮪
・ロッベンがさらにじいちゃんになっている
・アメリカ国歌斉唱の肩組み
・グリーンやっちゃった
・松井もっと良いチームに移籍して欲しい
・日本についてはきちんとトレースしていた連中が分析・評価するだろう
・マイコンみたいなサイドバックがいると超楽
メッシ/ルーニー/トーレス がノーゴール

最後に俺的大会ベストメンバー

フォーメーション:4-3-3
          FWフォルラン
          (ギャン・アルティドール

 FWビジャ             FWロッベン(ミュラー・イニエスタ)
                            

 
MFエジルドノヴァン        MFスナイデル(チャビ)
      
MFシュバインシュタイガー((Xアロンソ)
             
 
DFフシレ(ラーム)                DFマイコン(ラーム)
         DFプジョル  DFルシオ
                    ←←←テリー
        
GKカシージャス(ノイアー)
        スアレス
監督:マラドーナ

フォーメーションは今大会を象徴する4-3-3。このシステムは近年バルセロナやインテルで採用されたトレンドが、代表にも反映されている。伝統的なオランダ型4-3-3との一番の違いは両ワイド。典型的ウインガーではなく、中に切り込んでシュートを撃つフォワードやセカンドトップが配置される。

中盤の3人は流動的で、高い運動量と確かな技術を求められる、このフォーメーションでは一番難しいポジションだ。3人とも10番と5番の役割を兼務し、前の3人とも連動して攻撃する。最近では試合後にどれくらいの距離を走ったかのデータが出るが、大抵この3人が12km前後走っている。

守備の4人は役割としては4-4-2と同じだが、ここも中盤と連動するのでラインは高くなりがちだ。よってセンターの2人は足が速い。

ゴールキーパーも守備ラインと連動するので、捕球だけでなく足元が上手くないと使えない。ボールが軽量化したおかげで、キーパーからのロングキックやロングスローが重要な攻撃の起点となっている。

各プレイヤーそれぞれについても触れたいが長くなるのでこれで終わり。


現時点での結論:
ワールドカップは始まってから急に見るととても面白い


2010 FIFAワールドカップ 南アフリカ

サッカートピックを最後に更新したのは2006年7月、2006ドイツワールドカップの決勝の頃だった。それから4年、毎年8月~翌5月までのヨーロッパリーグ観戦と、早春~秋にかけての自転車3大レース+ワンデーレース観戦は、すでに日常となっていて、なんら特別な事ではなくなっている。アーセナルは今年も無冠で終了。この4年は補強で失敗してきたわけだが、ヴェンゲルが長年言い続けてきたように、ソング・ディアビ・デニウソンがようやく使い物になって、これでセスクをキープできて、ラムジーも復活して、シャマクやらハイクラスのキーパーやらバックアップの充実ができれば、来年こそ・・・いけるかもしれない。

逆に、その間断続的に行われるインターナショナルマッチに関しては、イレギュラーな、非日常的なものとして興味が薄らいでいる。これは日本代表に限らず、代表戦そのものに興味がなくなった。むしろ、リーグ戦の日程を乱したり、マッチデーの週は強制的に国内リーグ戦が休止となるため、邪魔ですらある。また過密日程による個々の選手への負担→怪我、そして代表戦での怪我(今シーズンのファン・ペルシ)など、実際クラブや国内リーグにも余計な負担を与えている。今大会もすでにロッベン・リオ・ドログバ・ナニなど活躍が期待されるスタープレイヤーが怪我で離脱している。ワールドカップは主要選手がリーグ戦で消耗した後に行われるのである。

ワールドカップは4年ごとだが、その間に、例えばヨーロッパでは欧州選手権(EURO)、アジアではアジアカップがあって、ワールドカップと同じように予選リーグ、本戦リーグ、決勝を行う。よって実質的にインターナショナルカップは2年周期だ。予選に使えるのは恐らく15ヶ月ぐらいか。ヨーロッパ(UEFA)の場合、この15ヶ月でどのように予選リーグを行っているだろうか。

現在UEFA加盟のFA(サッカー協会)は53。加盟国ではない。ワールドカップはFIFA主催の大会なので、国ごとではなくFAごとに出場資格がある。例えばフェロー諸島はデンマーク領だが、フェロー諸島FA(これもFIFA?)はUEFAのリージョンで予選リーグに参加し、毎回いいカモになっている(ただまれに波乱あり)。またフットボール発祥国のイギリスでは、FIFA設立前に既に存在していた英国四協会にそれぞれ出場資格がある。逆にIOC主催のオリンピックではこれが仇となり、「イギリス代表」を結成できず、もう長い間発祥国が出場していない。

そして今回の予選では、53を6×8+5×1の9リーグに分けて予選を行ったようだ。6チームのリーグ戦の場合、ホーム&アウェイで1チームあたり10試合行う。こう見ると意外に少なく感じるが、10試合を通常の国内リーグ戦に換算すると、実に2ヶ月~2ヶ月半の試合に相当する。この分日程が詰まるので、週2試合だとか、中2~3日で試合が続くとか、負担の多くは選手や所属クラブにむけられる。これだけではなくて、予選に付随する国際親善試合を入れると、恐らく14~16ぐらいにはなる。

この負担を減らす方法がないわけではない。ワールドカップの場合、UEFAに与えられた本戦出場枠は13。現状これを、9リーグの1位チームと、2位チームの中から勝ち点の多い順に8チームがプレーオフ、勝った4チームとを組み合わせて、9+4で13チームを選んでいる。リーグ2位チームへの救済措置もあるというわけだ。減らす方法とは、この救済を無くし、すべて予選リーグ1位通過のチームを本戦出場チームとすることである。

53/13=4.07、つまり4×12+5×1の13リーグに分けて予選を行えばよい。4チームのリーグ戦の場合、ホーム&アウェイで1チーム当たり6試合行う。これでもまだ多いが、4試合=1ヶ月分の試合が減るのなら良いだろう。リーグ戦も4チームならば成立する。

予選リーグの組み合わせによっては本戦優勝も狙えるようなチームが2チーム・3チームとか重なる可能性もあるが、それはそれで「予選から死のリーグ」の面白さもある。逆にミラクルでフェロー諸島が本戦に出場できる可能性も今よりは高まって、そういう意味での面白さもある。実際今大会でもロシアやスウェーデンのような、個々人を見ると世界トップレベルの選手がいるのに本戦に出場出来ない場合もあるわけだから、なんら問題はないと思う。

問題あるとしたらやっぱ経済面か。何度も何度も例示して悪いが、フェロー諸島にとってインターナショナルマッチの経済効果は意外と大きいかもしれない。イングランドFAカップは伝統的にFA所属であればアマチュアクラブさえも出場可能な大会で、ちょっとの運があればマンチェスター・ユナイテッドと8万近い収容のオールド・トラッフォードで試合ができる。FAカップの収益は基本対戦クラブ同士の折半だから、アマチュアクラブにしたらこの1試合で向こう何年分の収益が得られる場合もある。それで設備を改善したり、良い選手を買って上のカテゴリに昇格できるかもしれない。つまりFAカップはカップ戦だけでなく、裾野の拡充にも寄与しているわけだ。ワールドカップやリージョナルカップは規模も相当大きくなって、経済効果も大きいため、こういう側面もないわけではないだろう。

結局治安の問題は解消されずに南アフリカワールドカップが開幕する。日本からの観戦ツアーも定員に達していないケースも多いらしく、また日本代表も初出場の時から比べても、一番状態が悪いかもしれない。なんか、オリンピックに近い感覚がある。特に応援したいチームも、そのバックボーンをまったくトレースしなかったから無いし、今更ミーハー的に見ることも不可能だし、こうなりゃ一周してボーッと見てやろうかと思っている。

WC2006 FINAL

イタリア 1 (PK 5 – 3) 1 フランス
ジダン頭突き引退について、きっかけとなったマテラッツィの「テロリスト」発言について真実かどうか、現在の所双方の意見が食い違っているので行為の是非はあるが、引退試合+ワールドカップ決勝という事から察すると、相当な事を言われたのは間違いないだろう。ジダンがアルジェリア(イスラム過激派のテロが多い)系フランス人だということからすると、この発言はあってもおかしくない。ヘディングの空中戦で小競り合いがいくつかあって、それが溜まって何度目かの空中戦の時につい当たりが強くなったり手を出したりすることはたまにあるが(デロッシがこのパターン)、あんな露骨に頭突きをかますシーンは思い出しても記憶にない。それまで優勢にゲームを進めていたフランスもこれ以降人数的な問題でPK戦での決着を目指す雰囲気になったし、メンタルが一番左右するとされるPKではなーんかフランスの負けムードが漂っていた。
一応試合感想も書いておこう。開始すぐにアンリが「脳揺れ」状態になり、おいいきなり交代かよと不安になったが、再開後なんとマルダがダイブ気味のPK奪取。思い返すと、仮に頭突きが無くフランスが優勝していれば、このPKはあのレバークーゼン戦のダイレクトボレーシュートと並んで「ジダンの伝説シュート」として残ったことだろう。どの解説者も言っていたし、俺もそう思ったが、WC決勝の先制点という場面でチップキックはお見事すぎる。ただなあ、結果的には恐らく伝説シュート→頭突きが1セットで語られるんだろうなあ。
この1点で、フランスがいつものドン引きカウンターになりつつあったんだが、イタリアがセットプレイで同点に追いつく。PKを与えたのもマテラッツィであれば、豪快なヘディングシュートを決めたのもマテラッツィ。この時点では自作自演かよと軽く思ってたんだが、最終的に頭突きのきっかけもマテラッツィというのも何か因縁めいている。
これでお互い五分の試合に戻る。この時点でのイタリアディフェンスはまだ元気で、28分頃のフォアチェックからロングボールを蹴らざるを得ない状況に持ち込んだシーンは今大会の守備の良さを象徴しているようで、また3回のCKがいずれも決定機でうち1回は得点という、前半はどちらかと言えばイタリア優勢で終了した。
ただ後半時間の経過とともにイタリアのフォアチェックが少なくなって、ディフェンスと言うより「カンナバーロ+ブッフォン」て感じになって、フランスの決定機がかなり増えた。これはイタリアの運動量が減っていったにもかかわらず、フランスの両サイド、リベリとマルダは積極的に突破やフリーランニングを仕掛けていて、それにアンリが絡むシーンが多かったからだ。ここにきてようやくアンリらしい緩急のドリブル突破を積極的に試みるようになって、鉄壁の二人がいなければイタリアは得点されていたかもしれない。ついでに書くとこの日もトッティは消えていて、交代したイアクインタ・デロッシ・デルピエロも流れを変える要因にならなかった。で後半終了、延長戦へ。
延長になってもフランスが変わらず攻め続ける。ジダンのヘディングシュートは紙一重でブッフォンセーブ。こうしたフランス優勢の中で頭突き事件が起きて、これ以降試合が壊れてしまった。
結局俺は表彰シーンやトロフィーを掲げるシーンを見なかった。元々イタリアサッカーは嫌いだが、劣勢の時になりふり構わず相手を貶め流れを引き寄せるというのはそれだけ勝利への執念が強く、後々の記録や記憶には勝利しか残らないという事を知っているメンタリティだし、その点は凄いと思う。建前では「どんな理不尽でも暴力はダメ」だの「全世界の子供に悪影響」だの言われるだろうが、個人的にはサッカーとは無関係に、一人の人間として致し方ないほど侮辱されたらぶん殴るのも仕方ないと思うし、勝利よりも人としてやっちゃいかんことはあるんでねえのと思う質なので、やはりこの優勝は非常に後味が悪く、見るに値しなかった。

ドイツ 3 – 1 ポルトガル

開催国ドイツが有終の美を飾るべく、銅メダル獲得を目指した3位決定戦。
こういう試合はお互いに結構空気読みやすい。ヘタに決勝戦だと空気も何も、どっちのチームも「優勝したいオーラ」で満たされるので全く違った展開になったことだろう。で、相手がEURO2004の決勝で開催国ながらギリシャに負けてしまったポルトガルというのもなんだかなあ。
試合前からニヤニヤニヤニヤ、フェリポンとクリンスマンはまるでなんらかのアピールのごとく事あるごとにハグをかまし、客観的に見たら、カッパハゲのさわやかおじさんとシチリアンマフィアのボスのような風貌の濃いおじさんが2-3度抱き合うなんてとんでもなく異様だが、場所がふさわしければいい絵になる。
これがいわゆる「3決の雰囲気」なんだろう。ここまでの過程の中で両者とも、例えばアルゼンチン・イタリア・オランダ・イングランド・フランスのような強国とガチ試合をしてきた時とは明らかに違うムード。薄ら笑いがよく似合う全体の感じ。なんだこのギャップと思うが、これこそ3決なんだなあ。
レーマンがカーンに花を持たせ、フィーゴもついでに有終の美と。次代の象徴シュバインシュタイガーが全得点に絡むと。表彰式もにやけ面がとても似合う雰囲気で、まあ決勝の前哨戦としてみれば余興としてはよかったと思う。つーか、決勝が楽しみで正直あんまちゃんと見てはいない。

ポルトガル 0 – 1 フランス

ジダン・フィーゴ

フェリポンのやりくり采配で自己最高ベスト4まで勝ち上がってきたポルトガルと、未だ攻撃の形ままならずも、鉄壁ディフェンスと個人技で勝ち上がってきたフランスの準決勝-2。
終わってみればつまんない試合だった。ワールドカップのセミファイナルがこんなお通夜みたいなんでいいんだろうか。勝った方が優勝を争うファイナルに進出できるという理屈はわかるが、このゲーム単体で切り出して、例えばジダン的に、アンリ的に、フィーゴ的に、デコ的に、ロナウド的に、ジベ的に、ヌーノゴメス的に、ドメネク的に、カランブー的に(チラ見した)、プラティニ的に、ベッケンバウアー的に、ベッケンバウアーの嫁的に、ブラッター的に、FIFA的に、「この試合はエンタテイメントである必要はなかったんだろうか???」。この点が試合内容から鑑みて非常に気になった。
だって仮にもワールドカップのセミファイナル、ある程度プラチナチケットだろうし、定価ですらたぶん平均100ユーロぐらいか?詳しく調べとらんのでわからんがたぶんそんぐらいだろう、まー中には馬鹿みたいにだまされて10倍以上の価格でぼったくられた人が結構いるであろう事は、日本でもマックス何たらのチケット問題とその後のハイエナ商売からわかるように、ある程度推察できる。
で、この試合が見せ物として100ユーロ、あるいは1000ユーロ、はたまたそれ以上の価値があんのかと。結果的に勝ったフランスファンは消化したかもしれんが、負けたポルトガルファンは負けたショックとつまんない試合見たショックがでかすぎる。内容はもういいだろう。30分頃のアンリPK奪取→ジダン得点。これで勝負は終わってしまった。あとはトーナメント先行逃げ切りの定石としてのドン引きカウンターをポルトガルが崩せず終了。
フランスは攻撃の形はこの期に及んで確立されておらず、この試合でも意志の疎通が明らかに無いシーンが結構あった。しかも、攻撃の核であるジダン・アンリラインが不協和音な感じ。まだお互いに譲り合い、リズムが生まれていないように見える。案外、無理からコンビネーションを高めるよりも、曲がりなりにもそのポジションで世界5指がいるんだから、各自の発想にまかせてるのかもしれない。その反面守備が鉄壁すぎ。一発勝負での強さがここにある。まるでイタリアみたいなやり方なんだが、元々フランスの特徴ってアーセナルみたいに足下の技術とタフネスを基盤として、パスをぽんぽん繋ぐ+スペースへのフリーランニングを主体とした、攻撃的なサッカーじゃなかったっけか?
もっと言えば、この状況を打開できる力強さをポルトガルには見せて欲しかった。ベスト4まで上がってきたんだからそういう底力は持っているべきだし、全体からもっとフランスに圧力をかけて欲しかったし、チャンスらしいチャンスがパウレタのゴール前の強さとC・ロナウドの無回転FKだけだったというのがせづねえ。ならよー、空気読んでイングランド勝たせてくれや。
これで決勝は「攻撃的?」イタリア VS 「イタリアぽい?」フランスか・・・。なーんかもうすでに0-0延長PKが眼前に広がっているような・・・・・。当初非常に面白い試合の多かったドイツ・ワールドカップも佳境に入るにつれて段々手堅い試合増えてるなあ。当然ちゃあ当然か。

ドイツ 0 – 2 イタリア

アルゼンチンを破り優勝も狙えるチームになってきたドイツと、ユベントス・ペソット問題や主力の怪我など多くのトラブルを抱えつつも勝ち上がってきたイタリアの準決勝-1。
見る前は、ドイツホーム(しかもベストファーレン)ということで、またもやイタリアはオーストラリア戦のような省エネ疲労待ち「カテナチオ」になり果ててしまうのだろうかとすごく不安だったのだが、いい意味でその危惧を裏切ってくれた事にまず感謝。いや、イタリアだからこそ圧倒的ホームチームの優勢試合であっても、ドン引きカウンター狙いで凌いでいけると思っていたので、このリッピの方針選択が意外でもあり結果的には非常に緊迫感のある名勝負になったと思う。
前に対オーストラリア戦のような戦い方をやっちゃうからイタリアサッカーが嫌いだと書いたが、それは今でもかわらない。攻撃的な戦い方もできる面子が揃っているのに敢えて守備的に戦ったりして、それが勝利至上主義的観点からして「OK」だからだ。しかも相手がオーストラリアという、個々のレベルからすると明らかに劣っているチームに対してそういう事をやっちゃうもんだからムカついてくる。
ドン引きカウンターは、守備の壁が厚いため得点される機会も減少する反面、カウンターに割ける人数も限られるため得点機会も減少する。結果見る側としては非常につまらない展開になってしまう。その点この試合ではサイドバックのグロッソ・ザンブロッタもガツガツ攻撃参加してたし、サイドのペロッタ・カモラネージも2列目から飛び出したりピルロ・トッティのパスを受けたりして、かなり攻撃的にやってくれていた。こうなると当然守備の枚数が自然減したり、サイドバックの裏スペースがぽっかり空いたりするもんなんだけど、守備VS攻撃の駆け引きの醍醐味ってそういう限られた中でこそ面白味が出てくるものだ。実際カンナバーロの守備者としての優秀さが際立っていたのは、クローゼ・ポドルスキーとの1VS1でまず負けなかったからだろう。例えば30分頃のシュナイダーのシュート、50分頃のクローゼ・グロッソのシュートシーンなど、得点が入ってもおかしくないシーンは結構あったし、結果的に0-0で長いこと進行したが、互いに攻撃意識が高く、それを安定した守備組織が阻止するという、非常に面白いゲームだった。
ただ前半から高いテンションでお互いに攻め合い、同時にきつい守備を展開していたので、65分頃から動きが鈍り全体が間延びして大味な雰囲気になったのは仕方のない部分だろう。90分間テンション高いままというのは滅多に見ないし、リーグ戦やカップ戦でも70分ぐらいを境に、それまでテンション高ければ最後まで流した感じになるか、ラスト5分にあと一盛り上がりある感じになり、それまで平坦であれば70分から急に試合が動き出す(こっちの方が見た後の印象は良くなる傾向)。
結局イタリアがオーストラリア戦と同じようにラスト2分ぐらいで試合を決めてしまったんだが、それとは全く性質が異なる得点だ。オーストラリア戦では相手の攻め酔い・自身の守り慣れという展開から間隙を縫って出し抜くような、ある意味「セコい」得点だった(PKに値するファウルだったかという議論もあるが、レフェリーが吹いた以上それは全く問題ではない)が、今回は相手の圧倒的ホームゲームにもかかわらず、最後までポゼッション優勢を維持し、リッピもイアクインタ・ジラルディーノ・デルピエロといった攻撃の駒を投入し続けたことによる運の引き寄せ、勝ちに値する試合展開だったし、ゲーム自体も非常にいい内容だった。
ドイツに関しては、前のアルゼンチン戦後の乱闘騒ぎで不幸にもフリングスのぶん殴りが発覚し、出場停止になったのは結構影響したように感じる。フリングスなら前につないだのに、とかフリングスならミドルシュート(結構精度良いやつ)撃ってるのに、といったシーンでケールは横パスで回したり、自分でキープしてしまったりと、明らかに「ディフェンシブハーフの質の違い」がチーム全体に影響していたように感じる。バラックもいつものように攻撃を主とするのではなく、攻守ともに顔を出すバランサーのような役割を演じていて、結果FWのクローゼ・ポドルスキーもペナルティエリアよりちょい前ぐらいでパスを受けるシーンが多かった。
決勝でもこういう風な「攻撃的なイタリア」をやってくれたらうれしいが・・・・。どうかな・・・。

ブラジル 0 – 1 フランス

Zizou

選手配置が勝敗を分けたかな。
フランスは、ジダンがサスペンションとなった試合以外で貫いてきた基本フォーメーションの4-2-3-1。アンリをトップに張らせ、ジダントップ下、マケレレとヴィエラがセンターで守備的な中盤を形成する。これまでの試合では、アンリがサイドに流れてクロスを送ってもゴール前に誰もいなかったり、決して完成されたフォーメーションではないが、フランスはジダンと共に心中する=ジダン最後のチームを意識した布陣となった。
対するブラジルは、なんとここまで貫いてきた「カルテット・マジコ」を捨て去り、馬力のないアドリアーノに代わって交代出場で結果を残していたジュニーニョを中盤に置き、ロナウジーニョをFW気味に用いる4-4-2。マジコ・スタイルは崩したが、パヘイラらしくやはりブタは意地でも使ってきた。
で結局これが裏目ったんだな。段々調子が上がってくると目されていたブタは相変わらず走らず、ロナウジーニョは通常より高い位置を任されたため、彼がボールを受けて突破を計る前の段階、フランス中盤の2人やサイドの囲い込みによってボールを奪取され、プレイする機会が激減してしまった。かといってフォーメーションを崩すように後ろに下がって受けることもなく、アドリアーノが投入され定位置に戻るまでは良いところがなかった。
一方この日のジダンは神懸かったようなスーパープレイを連発、マイボールを奪取されるシーンがほとんどなく、おまけにルーレットまでやっちゃったりして、ロナウジーニョとは対照的に見事なゲームメーカーの役割を果たしていた。
フランスはジダンの好調だけではなかった。アンリは相変わらずのらりくらりとしながらオフサイドラインのギリギリを狙っていたが、リベリの2列目からの突破がよいアクセントとなりフランスに勝ちムードを呼び込んでいたように感じる。
現地実況では、テレビ画面では見えないフランスのディフェンスラインの押し上げについて再三指摘していた。つまり、ブタがオフサイドラインの突破を試みようとしてもテュラムを中心にラインコントロールが素晴らしく、そうこうしているうちにパサーであるカカやロナウジーニョに中盤のヴィエラ・マケレレの寄せがやって来てファウルなしにボール奪取に成功するシーンが結構あった。大会前はフランスの中盤が疲弊してくると予想してたんだが、いやいや、一時言われてた「世界最高のセンターハーフ」にふさわしい活躍ぶり、ブラジルに攻撃の機会を与えず、攻勢をキープできた一番のポイントだろう。
ベスト4に名を連ねたことで、次は最悪負けても3決の試合があるため、ジダンのラストゲームは残り「2」となった。ここまで行くとは全く思わんかったなあ。
※試合を見終わり、アパッチ攻撃ヘリの特集番組を見ながら試合の感想を書き、書き終わってニュースを見ると中田英がサッカー選手を引退していた。なにこのギャップ。お前まだごって若手やーん。ちょいまだ詳しくわからんのでしばし静観しとこう。

ドイツ 1 (PK 4 – 2) 1 アルゼンチン

カーンの闘魂注入

70分頃のリケルメOUTについて、試合後のインタビューではその理由を聞いてくれなかったのでまだ真意はわからんのだが、カンビアッソ投入=守備固めだとすると(俺はそう思った)、アルゼンチンらしくない交代だ。ここまでの戦いではリケルメを中心としたポゼッションを重視して、守備も読み予測を重視した高い位置からの囲い込みを主としていて、守備固めのように「相手の攻撃を受けて防ぐ」ようにはしていなかった。それにもまして、万一同点に追いつかれた場合(実際そうなったんだが)、リケルメ不在による攻撃パターンの激減をペケルマンは想定しなかったのだろうか。そんなハゲちらかしのように無為無策の監督ではないし、そういうリスクを込みでのギャンブルだったとしたら、それほどあのスタジアム内の雰囲気というか、ドイツゲルマン魂の執念を感じていたのかもしれない。
もう一つ重大なポイントとしてはアボンダンシエリの負傷交代だった。レオ・フランコがアボンダンシエリと比較してどうこうではなく、メンタルの準備もない第二GKがいきなり入って活躍できるほど、ワールドカップのトーナメントがやさしい試合で無いことは素人でもわかる。PKまでもつれたら負けは確定だろうとぼんやり考えていた。
しかも最後のカードがフリオ・クルスて・・・・・。おい、インテルのあのボケを、この局面で投入したって勝ちムードねーーーーーーーーーーーーーーーーーーんだよ。メッシだろがーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。結果的にはそれなりに活躍してたんだが、自ら突破を仕掛けることもなく、「勝ちオーラ」「得点オーラ」は微塵も感じなかった。
で、PK。カーンに闘魂注入されたレーマンの自信満々ぷりに対して、レオ・フランコの存在感のなさというか、こういう局面のオーラのなさっぷりはかわいそうすぎた。次々際どいところに決めてくるドイツキッカーに対峙して、右側に自信なさげに倒れ込むだけ。彼を責めることはできない。PKになった時点でこういう展開はそれこそアルゼンチン自身もわかっただろうし、例えばラームの横パスミスカットでマキシシュートなど、90分+延長戦の流れの中で試合を決める以外勝ち目はなかった。
この日ドイツは、アルゼンチンにはガチでテクニック勝負やっても到底勝てないと理解した上で、守備はガッチガチのリトリート、守備ライン+マスチェラーノぐらいまでのポゼッションは許容する代わりに、決定的な部分でのFWやリケルメの動きを封じることに集中した。最終的にポゼッションはARG 60 – 40 GERぐらいだったと思うが、ある意味この結果はドイツの思惑通りだったように感じる。
アルゼンチンはこの流れに身を任せ、自分らの戦術通り最終ラインからのロングフィードはほどんどなしに受けて立った。この点に関しては、エインセが長いこと怪我で不在で、彼の特徴である正確なフィードの有効性をテストマッチで試せなかったのもちょこっと影響しているかもしれない。ともかく、ゲーム自体が非常に緊迫した、言い換えれば動きのない展開に終始したのはドイツの作戦に依るところが大きいし、先制されてからのクリンスマンの采配は見事にハマリ、対するペケルマンはぶっ壊れた。
あとオドンコール投入後、シュナイダーと比べて頭空っぽで突進してくるものだから、それにソリンが手こずったのもじわじわジャブのように影響したのではないかと思う。ああいう空気読まずに突っ込んでくるタイプは攻勢の時活躍するよなあ。
あー負けちまった。前回トルコがブラジルに負けた時はまだ3決があって、しかもホーム韓国に勝って(確かハカンシュクルの最速記録ゴールがあったはず)3位になってくれたもんで結構達成感はあったんだが、今回は優勝も見越せるアルゼンチンがトーナメント戦の巡り合わせにより準々決勝で消えるというのは非常にもったいなく、非常にせづない。これが事実上の決勝だったと言われるように、ドイツには是非頑張って欲しい。

Round-8前

残り8試合、56/64が消化されたわけだが、そのうち半分(+ちょいぐらい)は試合を見ていない。GL中は1日3試合が10日連続、4試合が4日連続、間断なくRound-16の2試合を4日連続、初日の2試合と合わせ合計19日連続で世界最高峰の試合が組まれた。やっぱねー、これやっぱ、まあヨーロッパのリーグ日程の影響が大きいんだけども、やっぱ詰めすぎ。
事前に予定を見て、GLのうち気合入れてみる試合(アルゼンチン・ブラジル・スペインの試合など)を決めて、その試合がある日は時間をずらして1試合目に見るようにしてたので、その点問題はなかったんだが、その他の「見たいけどやや優先度が落ちる試合」についての相対的な価値低下がものすごかった。だってや、これ、ワールドカップの試合だぜ。通常なら多くの試合はプレミアムな試合のはずなんだけど、それがいくつも、それも連続であるとどうしても効用は低下する。一応見つつも、なんかこう乗り切れてない時があったりして、非常にもったいなかった。これはまあ、4年に1度のお祭りとして捉えればしゃーないかな。
予想のまとめで書いた
◎ブラジル
○イングランド
△アルゼンチン
▲ドイツ
4チームともRound-8に残っているという順当さ。強豪が熱い試合で勝ってきてるから今回のワールドカップは総じて面白い。予想の時点ではRound-16のやぐらを一切考えず書いたもんで、今時点での訂正を加味して最終予想。
◎アルゼンチン
○ブラジル
イングランド
ドイツ
アルゼンチンはドイツに勝ち(勝ってくれ)、ドイツが消える。イングランドは当初の予想と比較して、リオとテリーの最終ラインでのプレイミス、GKロビンソンとの連携ミスが結構印象に残ってるのでちょっと落ち目。ブラジルは相変わらずブタがブタのままで、アドリアーノも馬力無く、カカとロナウジーニョの奮闘がかわいそうに見えてしまう。いっそフレッジ/ホビーニョに変えちゃうなんてどうだろうか。
決勝はこれまた願望込めて、ヨーロッパでのワールドカップでアルゼンチン×ブラジル、てなんかドラマ生まれそうでいいじゃないの。で、世界中の視聴者の前でソリンがキモいにやけ面でカップを掲げると。
※ようやく追いついて来たが、Round-16の試合も4つ見てないのがあるんだよなあ。でニュースとか見てるうちに結果だけ知っててせづねえ。

イタリア 1 – 0 オーストラリア

俺は、こういう勝ち方をしてしまうから、イタリアサッカーが嫌いだ。

PK前トッティ

全体的にイタリアの出来は悪かった。前半は、一発勝負のトーナメントということで、気温の高さも考慮してか古来伝統の省エネサッカー「カテナチオ」を敷いて、サイドバックがあまり上がらず、攻撃もFWの3人+ピルロだけでフィニッシュまで行く形を徹底していた。1トップのトニはでかい体格に似合ったスケールの大きさと、でかい体格に似合わない足下の確かな技術で、無理目なクロスやスルーパスも強引にシュートまで持っていってしまう。何度かもたらした決定機もシュウォーツァーの好セーブで得点できなかったが、個人の質としては非常に高い印象。展開はオーストラリアの攻勢で流れていったんだが、それもイタリアの思惑通りといった感じで、度々繰り出されるカウンターのキレが凄まじく、カテナチオのお手本のような戦いで終了。
後半、激しいプレーでおなじみのマテラッツィがおなじみレッドカードで退場した時が、終末への始まりだった。10人になったイタリアはFWとOMFを一枚ずつ残し、あとはドン引きカウンター狙い。オーストラリアは攻勢を強め後半ほとんどの時間帯流れを握っていた。ただシュートが決まらない。チャンスの芽は早めのファウルで潰される。GKブッフォンの鬼セーブ。
おや、これはこれは、毎度おなじみイタリア「ドM」サッカーではないか。
守り慣れしたイタリアと、攻めに酔ったオーストラリア、終了間際にドン引きだったサイドバックが仕掛け、しばらく守備をやっていないオーストラリアに誘うようなPK。相当のプレッシャーがかかろうが、決めるべき人がふつーに決めてしまう。
なんじゃこりゃあああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
この絶望的な負け方だけでヒディングを批判することは到底出来ない。大陸間プレーオフの高い壁を乗り越え、さらに初出場GL突破は彼の存在に依るところが大きい。
しかし、この流れに抗うことはできた。ヒディングが交代選手を次々投入することで、「90分で勝つ」というメッセージを伝えるべきだった。だが延長30分も視野に入れていたのか、結局アロイージを投入しただけで終わってしまった。いやこれは結果論ではなく、毎度おなじみのイタリアサッカーの光景を打破するため、メッセージを込めた選手交代はできたはずだ。ヒディングの采配が最後こういう形になってしまうのはある意味必然の結果であり、こんな後味悪い(イタリアファンにとっては激烈な勝ち方かもしれんが)勝利をやってしまうイタリアは強いチームだし、もう一度言うが、俺はそういうイタリアが嫌いだ。
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あんまむかついたもんで、録画しておいたデイリーハイライトを見てみると、誰か忘れたがイタリアにとって2002の韓国戦、トッティがシミュレーションで退場し敗退した、その主審がスペイン人だったということで、因縁めいたものを感じたらしい。また別なのでは(何で見たか/読んだか忘れた)リッピが先手を打って交代選手を的確に投入したのと、ヒディングの采配に迷いを感じたという、監督の心理戦に焦点を当てたものもあった。人によって見方が色々あるから面白い。