山猫は眠らない ★★★★☆

アメリカ海軍の特殊部隊、スナイパー部隊。そこに属する二人の軍人が政府側からの密命を受けて麻薬組織のボスをぶっ殺しに行っちゃろうと。
スナイパーものです。
最近見たスターリングラードとの一番の違いが、本作はスナイパーオンリで成り立っているということ。この緊張感抜群のスナイプ野郎どもにはあいらーびゅーあいにーじゅーはまったく似合わず、それよりも緊張の続くテンションで押し切った方が全くしまりのある構成になるみたいです。というわけでスターリングラードよりも面白い。
このように汗が噴き出し、血が滾る漢のゆうじょう物語が大好きな方は熱く燃えるような心持ちで鑑賞できるであろうし、そんな暑苦しいのは大嫌いという場合は画面自体はそりゃもうスナイプなもんだから、非常に地味、あまり楽しめないことでしょう。少なくとも、ドルフラングレン先生とかジャンクロード・バンダム先生とかの超B級映画ではない、骨太映画なんでハマれば思い切り楽しんでみれると思います。
でもなんつってもゆうじょう話だなあ。ラストの言わずもがなとか、スコープ越しのアイコンタクトとかスコープ使って口読術とか、スナイパーならでわのゆうじょうがいい。メタルギアソリッドでは何が何でもスナイプでぶっ殺したいとかいう方や、ゴルゴ13が大好きという方は必見であります。

五条霊戦記 ★☆☆☆☆

義経VS弁慶。
この頃からやけに、永瀬正敏と浅野忠信共演の映画が多くなって(PARTY7とかエレクトリックドラゴンとか)、なんか日本映画の間ではそういうブームが起きとんのかなあといった感じだけども、まあ確かに二人とも格好のいいたいそうな役者さんであるから、その共演となると現代日本映画ファンなら誰しも見たい感じの組み合わせではあるが、正直言ってこれら二人の組み合わせというのはどうもしっくりこない。
永瀬は演じようとすれば演じることもでき、逆に自然体もこなせるようなマルチ俳優、一方で浅野は自然体なればこそ生きるような雰囲気でかっさらうタイプなのでそこにIRQの競合が起こってしまう。若大将シリーズのように、青大将は引き立て役であるけれども実は彼自身も裏の主役であるといった関係ではなく、かといって夢のスター共演として割り切ることも能わず、どっちつかずになってしまうのが最近の共演映画の特徴だと思います。
で本作。これはその中でももっとも最悪なパターンで、まず彼ら二人に歴史上のキャラを要求するのが間違ってたんだろう。永瀬はとくにこう、事前の設定のないフリープレイヤーみたいなものだったのでまあなんとかなってはいたが、淺野の方が思いっきり義経だったんでこれはかなりきつかった。現代の若けえ兄ちゃんを演じればこその役者だけに、こう完璧演じなければならないというのはまずハマらない。
さらに追い打ちをかけるのが、ストーリーが全く面白くないという点です。これはもう役者以前の問題で、まあ演出みたいなことも影響してるのかもしれんが、とにかく面白くなかった。
なので、見なくていい。

ミュージックオブハート ★★☆☆☆

バイオリンの先生がどうやら奇跡みたいのを起こしてしまわれたらしい。
題材的には苦手なプチ奇跡もの。でもこれは現実に起こったことを元に話ができているらしいし、だとすれば一介の失業気味バイオリン先生が世界的なバイオリニストとかを集めてカーネギーホールでやっちまうというのはそれはそれですごいことだし、確かに奇跡的なことなのかもしれん。
しかし問題なのが、奇跡ものに付き物のオーバーリアクションが多分にアメリカナイズドされてるというか、そりゃもうアメリカ人がやりそうなリアクションなだけにそこのところが非常にしゃくに障るわけで、いい気がしないわけで、そうなると物語がどうでもよくなり、実際途中昼寝みたいなこともはさんだのにそれでも退屈であり、時間を持て余して結局雑誌を読みながら見てしまうという体たらく、やはり肌に合わない種類の映画を敢えて見てみようなんて考えるものじゃありません。
そしてクライマックスにかけてのあのアメリカ人が好きそうないい感じの成り行きのようなものがとっても嫌いな者にとっては、あまりいい気はしない。やはり私のような歪んでいる者が見てはだめです。昔「買ってはいけない」という本が少し話題になって、それがまた「『買ってはいけない』は買ってはいけない」とかいう本も登場してしまって、どうにもこうにも、アホかと、またこんなん買うヤツも相当なばかたれなのじゃなかろうかと思った時がありましたが、まさしくそれ。「見てはいけない」。
ただこういうアメリカンヒューマンドラマが、たとえばウーピーでウピウピしたいとか、そういうのが好きならそこそこ楽しめるのではなかろうか。私はきつかったです。

マン・オン・ザ・ムーン ★★☆☆☆

オオカミ少年系おもしろ芸人、アンディ・カフマンの話。
まず結論から書く。全然面白くなかった。
先に結論を書いたのは、本作の題材が「面白さの追求」だったから。そういう意味でまず面白いか面白くないかを述べたかった。単純に、カフマンがやったとされているギャグというか笑いというのがどこが面白いのか全然理解できない。ナンセンスゆえの理解不能といえばそれまでだが、カフマンという人間のストーリー以前に彼の笑いが全く笑えないというのが非常につらい。
なんでそうなるかというと、早い話が日本人とアメリカ人の笑いの琴線の違い。これは文化的な背景とか、あと言語が持つ余韻のようなもの、そういうのがまったく違ったならば笑いも全然違う。前に日本の芸人の第一人者と言っていい松本人志が「アメリカ人を笑わせに行こう」という企画をやったがこれまた散々な結果で、日本人がアメリカ人に受ける方法を追求した結果、どっちも笑えない中途半端な映像になってしまったことからわかるように、悲しみ以上に笑いの感覚はまず文化圏ごとに、そしてそこから少しずつ人間一人一人が異なるはずです。
ここまでは「笑い」についての感想。では笑いのことは切り離して、「カフマンがアメリカでは非常に受けた、それはそれはもうおもしろ芸人である」ということを前提に彼自信の話の部分、裏切ることが笑いであるという彼の生き方はどうだろう。
正直ここも着いていけない。それは根底に「だっておもろくないだろ」というのがバーンと大きく横たわっているんだけども、それを除いてもこいつの芸はダメだ。だって裏切り方があまりにひどい滅茶苦茶な感じで、なぜこの人が伝説的な芸人になっているのかまったく理解不能。なんかもう童話のオオカミ少年を無視する老人どもの気持ちがわかる。ただのアホたれにしか思えん。
・・・ああもう、これじゃ堂々巡りだ。よし、今からおれアメリカ人。カフマン大好き。サイコー。とってもおもしろい。よしこれが前提。前提だぞ。まあでもストーリーはうまくできてるんだよね。素の自分の笑いが相手にされず、仕方なく迎合した反動で自分自身も笑いの方向がずれていってしまうという皮肉っぷり、この辺はいいと思う。だけどなぁ・・・・。
あと変なとこで、主題歌が歌詞にもアンディ・カフマンがでているREMのMan on the moon だったり(多分REMの方が先)、カフマンの恋人役がコートニーラヴだったり、若干ロック寄りみたいです。