わたしは貝になりたい ★★★★☆

俺も貝がいいかもな。
第二次世界大戦の被害者、BC級戦犯として処刑されていった下級兵士の想いを形にしたような作品。これまで自分はWWIIの戦犯といえば東条英機とかの戦争責任者、総じて死刑になってしまったA級戦犯を思い浮かべるだけであったが、それは表面上のことであって、実際はそれら戦争責任者に連なる膨大な数の下級兵士がいるわけで、そういった人たちは本作のように半ば冤罪のような形で裁かれていったのだろう。それとこの映画で衝撃的なのが、戦後の人生がどう転んだのかは紙一重の所だということだ。
本作は1959年に上映された、フランキー堺主演の映画のリメイクであるが、リメイク前の昭和34年にリアルタイムで見た人々はどれほどの衝撃だったのだろう。「もしあの時自分が・・・」そう思いながら見た人々、元下級兵士の人々がたくさんいたと思う。これを見て改めてオリジナルのフランキー堺のほうを見たくなった。それでないとこのリメイク作の感想なんて書けないです。

テルミン ★★★★☆

テルミン(楽器)を発明した博士とその周辺の話。
今もあるかもしれないが、昔ギター雑誌を買っていた頃に石橋楽器の広告でよくみたのがこのテルミンという名のエフェクターだった。たしか「イシバシ楽器がつくりました」てのがセールスポイントで、「かのジミー頁も本番で使用したとかしないとか・・・」みたいな文句が書いてあったと思う。まずテルミンと言われるとそれが浮かんでくるが、それこそ「テルミン」のような奇妙な音がでるエフェクターだったらしい。今調べてみた。
これは奇妙な音が鳴る楽器を発明したテルミン博士の伝記的ドキュメンタリー映画で、出演者もすべて本人、そういう点で映画を見ているというよりETV特集のドキュメンタリーを見ている感じだった。しかしドラマがあればとりあえず映画の体をなすもので、この博士の万丈人生を振り返る作業は面白い。それを増幅させてくれるのが当の本人が発明したテルミンの音色。しかし色々こき使われたくせに長生きしたなぁこのじいさん。

タクシードライバー ★★★★☆

悶々としたタクシードライバーが一丁やらかす。
若いころのデニーロの出世作とよく言われる作品。また「この頃のデニーロはよかった・・・」ともよく言われる作品でもある。一頃のアクション映画に出まくっていた大量生産デニーロとはちょっと色合いが違うというのは見てわかる。ディアハンターに近いものがあるかもしれん。そういえばあれもベトナム戦争で狂気インフレになった男の話だった。
ずーっとため込んだうちに秘めるオーラパワーをへんな方向に解放したような話で、まったくもって共感はできないが、それまでの事の顛末を見るとなんとなくそうなるかーって思う。「太陽を盗んだ男」の二面性に近い感じ。この殺伐とした悶々とした雰囲気は独特で、なんというかダメ人間の香りプンプンなんですこのタクシードライバー。
ただ自分や自分に近しい人々がそうであるからよくわかるんだが、ダメ人間にも大きく2種類あって、つまるところ良いダメ人間と悪いダメ人間がある。良い方は自分がダメであることを前提に、そのダメさを楽しもうという気概があって、ある部分に精神的な欠陥を抱えているけれども線引きはうまくできる。悪いほうのは、ダメを劣等感とし全く自分の中に閉じこもってしまう。あるいはそれが爆発するとデニーロになるんだろうな。モヒカンにして銃乱射よ。

少林サッカー ★★★★☆

うだつの上がらぬ少林寺拳法使い達が、サッカーで一旗あげる話。
久々に見る前の期待が大きい作品。遡ってみるとPARTY7以来かもしれん。あれはひどい映画だった。しかしこの少林サッカーの場合はちと違う。まず去年の段階で、つまり香港で上映中で日本では公開されていない状況の中で、映画専門誌の「2001年のよかった映画ベストテン」にランクインしたということを聞いていて、なんというか期待してもいいよ光線が出ていた。
映画館で観たのだが、まず驚いたのは映画の内容よりも映画館内と自分との温度差。コメディー映画を映画館で観たのは「ラヂオのじかん」以来だが、今回特に感じたのは総じて女性の笑いの温度が低いこと。わっかりやすい笑いのポイントでどっかんどっかん笑うし、逆にこっちがクスっとくるような、いわゆるシュールな笑いの部分にはまったく反応しない。最近特にレベルダウンが際立つNHKの「爆笑オンエアバトル」の客も女性が多いし、しかもどうしようもなく笑えないネタが高キロバトルだったりする。
で話もわかりやすい。逆にこういう映画が難解なストーリーだとそれはそれで困る。前評判では「ノリがアストロ球団」ということでも期待していたのだが、実際見てみるとアストロとは全く別次元だった。アストロの場合は「一試合完全燃焼」している姿が見ててバカかっこいいのであって、少林サッカーのように笑わせにかかっているんじゃない。そこは期待はずれだった。
しかしまあ、お笑い映画として軽く見るのにはいいのではないでしょうか。

アメリカン・サイコ ★★★☆☆

若くして大企業のCEO、上辺のつきあいに辟易した彼は人が殺したくなったようです。
正直よくわかんねぇ。ああいう結末というのは、これがすべて主人公の妄想であるという夢落ちなのか、それでなければなんなのか謎多きまま終わってしまった。
ただひとつ、主人公は自分が大好きでキチガイてのはよくわかった。

キリング・ゾーイ ★★★☆☆

バカが無計画に銀行強盗する話。
全体的に緊迫感がないのでいまいちのれない。こいつら最初からあんま銀行強盗やる気ないし、もっと言えば成功させようという強い意志が欠如している。職業強盗ではないがゆえになんとなくうまくいったら御の字、捕まったらまあどうにでもなれぐらいに思ってるのか、そういう大馬鹿の銀行強盗を描いているので、見る側も惰性になってしまう。唯一見るべきポイントはジュリーデルピーのアレな映像。

天空の城ラピュタ ★★★★★

パズーは空から少女が降ってくるのを見た。その少女シータは天空に存在するとされるラピュタの地の正統後継者である。その証である飛翔石を持っていたため、空に浮いていた。ラピュタの力を求める軍、財宝を求める盗賊ドーラ、そしてパズーとシータ、それぞれの思いはやがて収束する。
アニメ映画を大人の鑑賞に堪えうる(東映まんがまつりの列にシラーっと並ぶような種類の大人ではないよ)レベルまで完成させたのが、ジブリもの(宮崎もの)の凄さだ。ナウシカや本作ラピュタは80年代初期の大友克洋を中心とした漫画ルネッサンスと同時代に描かれたものである。当時まだ漫画やアニメといった細分化すらされてなかったであろう「低俗ななにか」を文化的価値のあるものとして認知されるのに、宮崎駿もまた大いに貢献しているのだろう。
誰しも楽しめるテンポのよいストーリー、キャラ設定、脚本、音楽、そして根底に横たわる大きなテーマが示してあるために決して内容が薄くはならない。このへんが世代・時代を問わず宮崎ものが指示される所以だろう。
本作は数ある宮崎もので”自然との共生””繁栄賛美へのアンチテーゼ”などもちろん共通する大きなテーマは横たわっているのだが、同様のテーマを描くナウシカほどそれが強調されず単純な「冒険活劇ファンタジー」を存分に楽しめる点がいい。それはもうストーリーもそうだがキャラ設定の妙に尽きる。
特には盗賊ドーラの存在だ。単純に善vs悪の構図ではなく、こういう「悪いけどいい人」がいるだけでストーリー的にも広がりがでるし、こういう類のキャラクターに人はグッと感じるもんだ。彼らに共通する引き際というか潔さのようなものがいっそう感動を誘うのだろう。同様のキャラ設定にテレビシリーズで「未来少年コナン」がある。是非見てほしい。ダイス船長に男気を感じること間違いなし!