ターミナル ★★★☆☆

クラコウジアという国からニューヨークにやって来た男が、自国のクーデターのためアメリカ本土に入国できず、ターミナルで待つ話。
前々から人づてに聞いてはいたが、自分がこんなにダメ人間魂を内包しているものだとは改めて知らされてみてびっくりしたものだ。なんだろうこの気持ちの悪い拒絶反応。ハリウッド大作丸出しの感動シーンが挿入されるたび、「いい感じだなあ」と感じる心より以上に「おえーきしょ」という悪の心が飛び出してきて、何とも言えないいたたまれない感覚に陥る。
ストーリーはよくまとまっているし、笑かしてくれる部分も多い。ドリームワークスとその本家本元であるスピルバーグが作った映画なんだから、ストーリーは基本的に破綻するわけが無く、多くの人が「面白い」「いい感じだ」という風に感じるように作られたものだ。この点に関して自分も人間だからそう感じるし、それは娯楽として間違った方向ではない。その反面、これはロード・トゥ・パーディションなど同じような映画で何度も書いたことだが、この映画が一生ものの記憶に残る映画となるということも、絶対にないということである。
実際ビクターが言葉の通じない孤独な国でもがき、やがて様々な人々と関係性を作っていく過程は面白かったし、そのきっかけとなる出来事(キャリーカート・出国審査の女・掃除のじいさん・など)にはすんなり入り込めたし、そこが繋がっていくのもよかった。そういうストーリーの中のショートストーリー群にも淀みがなかったためか、映画の体感時間もかなり短いと言うことはそれだけ集中して見ることが出来たし、また「型にはめられた」ということでもある。
そういう型にはめられたことが嫌なのではなく、またこういう王道まっしぐらな映画をいいと思ってしまう自分が嫌ということではない。そういうことではなく、一般に「いい感じ」とされるシーン(出国審査女の結婚・やぎ事件後の空港内の態度の変化・掃除じいさんの飛行機ストップなど)を見て「いい感じ」という感情よりも、なんというか「気持ちの悪さ」が上回ってしまうという、これは御都合シーンに対する理不尽さではなく(そういう感覚はとうの昔に捨て去った)、なんかわからんが単なる「気持ちわりー」という感覚だ。だもんで今も「非常に後味の悪い良い映画見た感」というか、なんとも言葉に表しにくい感情を抱きつつ、自分のズレを感じたわけです。良い悪いではなくて。

インファナル・アフェア3 ★★★★★

ヤンが死んでうまいこと警察に潜り込めたと思っていたラウが、保安部の内部調査を防ごうとする話。
一応この3で完結らしいが、ざっくり言うと1は心理戦・2はゴッドファーザー・で3はまた心理戦に戻る。というのもこの映画の最後まで見ないとイマイチ全体像が見えてこないのだが、そのためかヤン・ヨン・シェンなど似たような名前が多く登場し、しかも早口の香港言語はよくわかんなくて結構同じようなトーンに聞こえるので、個人的には人間関係の把握にかなりとまどった。灰皿でぶん殴れと電話で指示したのがサムだと確定するのも結構後だし、あの場にヨンら保安部がいきなりいるのも引っかかるし、この辺は見る者の意識によって変わってくるかも。(理解しようとする姿勢を強く持ってみればわからんことはない。)
以上のような人間関係の把握以外でも、ストーリーは「ラウがサムの所でスパイをやっていた」という確定事項がわかっているだけで、シェン(大陸の闇貿易商・ひげにサングラス=実はこいつも警察側のスパイ)やヨン(保安部のトップ・メガネでシュッとしてる=サムと繋がってると見せかけて実はラウとサムの関係性を暴くためのおとり)の隠した部分は結局最後までわからないことであり、しかも後半ラウは自分をヤンと重ね合わせてしまうような妄想の世界に突入するので、正直かなりわかりにくい。
つまり1の心理戦は、「誰がスパイか」という心理を巡る攻防のテーマが明確で、それに向けて話を重ねていったり、盛り上がりがあったり(映画館やバスでの携帯など)、そういう肝心な部分は結構かっちりしていたのだが、3の心理戦はラウ以外は誰が誰の対象なのかもはっきりしないし、しかもラウは変な感じになるし、人間の絡み方がわかりにくかった。なので、墓でラウがシェンの顔を思いっきり見てるのはOKなのかとか、最後のテープの仕掛けがなんだか不自然だったり(一瞬なんか映像が映るがよくわかんなかった)、要するにわかりにくさが全体の雰囲気を醸し出す以上に、ストーリーの外観性を損なわせている感じがする。
ただやはり、長編物の強みか、あるいは「インファナル・アフェア」という前後の時間のつながりに意味がある映画のよさなのか、確かにあるシーンで1や2のあのシーンの意味がわかったような部分もあったり(ギブスやヤンとラウの初対面など)、全体の中身を濃くするというのは間違いない。また、1・2見たんだから見なきゃだめだろう。
最後にシリーズとして、こういう時間の流れを感じさせるマフィア物はゴッドファーザー以来で、しかもそれと比肩できるくらいの完成度なんだから、これは面白いシリーズ映画だと思います。