幼児期に生き別れた双子の兄が死んでしまい、その仕事をやるハメになってしまった弟の話。
クリス・ロックと言えばやっぱMTVアワードでのスタンダップコメディアンぶりというか、今回の映画でも何度か出てきたが相手が反論する間も与えないほどまくし立てる啖呵切りのうまさだ。こういういかにもな黒人コメディアン(サタデーナイトライブとかに出てそうな)は48時間のエディ・マーフィーやらラッシュアワーのジャッキーチェンの相方やら、コップアクションというのが似合うかしらんがやたら多い。今回のクリス・ロックも御多分に漏れずCIAときた。
なので、基本的に陽気な彼と、「脳みそ喰い」でおなじみレクター博士のアンソニー・ホプキンスでは、コメディタッチのアクションものをやりたいのか、本格的なCIAもの(テーマが核爆弾というのも扱いづらいし)なのか、いまいちピントが定まっていなかった。ざっと見た感じ銃の扱いに全く気を遣っていない所から察するに、やっぱこれはアクションコメディなんだろうな。じゃあテロリストが核爆弾云々という、現実でもかなり深刻な問題になりそうなテーマは止めて、なんか変なギャングがわけわかんねえ事やってるぐらいにとどめて欲しかった。
あと冒頭に特に多いのだが、場面とマッチしていないタイアップ丸出しの歌が相当うざい。例えばカーステからそういう音楽が流れる体なら、これでもきついがまだわかるが、場面のBGMとしてうんこラップやヒップホップというのは、そりゃ好きな人にしたら気にならないだろうがきついもんだよ実際。
アクション映画としては、おなじみ中途半端な銃撃戦・カーチェイス・さらに今回は爆弾寸止めまで盛り込んであるので、まったく無意味ではあるが押さえるべきポイントは押さえてある。なんだか、映画会社が一年に数本毎年のアクション映画クオリティを確認するために、とりあえず定番をやっておこうか的な臭いすら感じられ、最早ここまでくると不自然すら感じない伝統芸だ。
というわけで、クリス・ロックが相変わらず啖呵切りの名人であるというのを確認した、という事を除いては、ハリウッド定番のまったく記憶に残らない映画であった。たぶんこれはクリス・ロックを推すための品評作品なんだろう。そういう意味では成功してるから、いいんじゃない。