スパイナル・タップ ★★★★★

ロックバンド、スパイナル・タップの全米ツアーのドキュメンタリー。

ロックは、残念ながら、ダサい。この事をすぐに気付く人は少ないと思う。一見、ロックはかっこよく見える。なんかよくわからんけど、ギターを持ってギュイーングワユワーってやって、ピロピロ~~とかやって、・・・、・・・、・・・・ドコドコドコドコ、!!!!チャーチャーチャーチャーチャーン!!!ビービー!とか(各自脳内で変換)、一連の演奏がきまったら、かっこいい。

でも一寸よく考えて欲しい。その、先程までかっこよかったロッカーは、なぜ髪がもっさりと長いのだろうか。ソバージュをかけてるんだろうか。オカマなのか。ギターのヘッドを斜め上に上げて、苦悶の表情を浮かべているのか。☆のマークがいっぱい入ったラメのシャツを着ているのは。袖にすだれみたいのがついているのは。革ジャンにジーパンでラバーソールを履いているのは。なぜ演奏が終わったら半裸なのか。むしろなぜ最初から半裸なんだろうか。これでもわからなければ、「マイケル・アンジェロ/Michael Angelo」というキーワードで検索し、なんでもいいから動画を見て欲しい。・・・・・・。しばらく待とう。・・・・・。・・・・・。どうだろうか。

このように、本当に残念なのだが、ロックはダサいのである。一見して感じるかっこよさは、音楽の素晴らしさとそれに取り組む衝動との相乗効果で、ダサさが覆い隠されたに過ぎず、やはりよく見ると本源的なダサさはどうしても隠しきれない。スパイナル・タップとは、ロックのダサさを真正面から捉えた、全ロッカー(リスナー含む)推奨の、愛すべきロック映画だ。

ストーリーの中で、幾度となくロックの本質であるダサさが描かれるが、それはどれも、ある種の「あるある」に感じられるから、なんかもう、そういう俺がイヤだ。「11の方が10よりでかい」という事に意味を求めてはいけない。11は10よりでかいのである。問答無用。

音楽に限らず、ロック愛好家は人生の様々なシーンにおいてスパイナル状態に陥る。ロックに魅入られた人生は、これまた残念ながら苦節続きである。スマートに、予定通り、秩序立てて、論理的に、積み上げるのは不可能だ。いつもグダグダ、思い通りにいかず、急がば回れども遅れ、理屈が通じず、笑われのけ者にされて、道の端っこを歩くハメになる。ただ根っこの部分で一番やっかいなのが「当の本人がどこかでそれを望んでいる」つーのがもう、ホント、質悪い。ロックとはそういうものであり、そういうロックは、必然的にダサくなるのである。

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