女性刑務所の女達が脱獄する話。
「女囚さそり」シリーズ二作目。一作目を見たおかげで「見る前の心構え」は出来ていたので、作品のテンションにはなんとかついていけた。ただ本作にはさそり以上の怪物、何だかよく分からないが狂気のババアが登場し(自分で自分の腹を刺して胎児を殺すという、とんでもないアレな人)、こちらの想定をさらに凌駕する演出は素晴らしい。反面、ちょっと行きすぎというか最早悪ノリ、演出というより趣味、な過剰さも感じられ、その劇薬っぷりは同年代のB級アクション映画の中でも屈指の凶悪さだ。
Wikipediaで調べてさらにびっくりしたのは、一作目「女囚701号 さそり」が公開されてからわずか4ヶ月後にこの二作目が公開されている。つまり本作は文字通り「テンションのみ」で制作されている。しかも、これも驚きだが、公開日が1972年12月30日、”東映のお正月映画”てんだからあの時代の異様さがよくわかる。おとそ気分という言葉から察せられるように、お正月映画は軽い気持ちで(家族や友人と連れだって)サクッと見られるのが通例であり、それでも昔はこんなきちがい道まっしぐらなバイオレンスアクションをぶっ込めたのだから凄い。レイプ・拷問・強姦自慢(クーニャンを強引に云々という話はあの時代でもアウトな気がする)・チンポの歌・リンチ殺人・恥辱殺人、等なんでもありで、これがどう正月に見られたのか、非常に気になる。
内容はハッキリ言って薄い。きちんと編集すれば削れる部分を、何かしらんがわざとスローモーション使ったり(尺稼ぎか?)、逆に前後のつながりを無視した編集をしたりと、これもやりたい放題やっている。趣味と書いたのはその辺だ。悪ノリとテンポの悪さで冗長に感じるシーンも少なくない。例えば姥捨てのばあさんが呪いをかけるようなシーン(なんというシーンだ)、ストーリーとは何も関係無い。クライマックス刑務所長の処刑シーン、車につっこむ死体が明らかに人形(ビニール人形?)なのは良いとして(本作ではこんなもんは最早”ツッコミどころ”ですらない)、さそりが何遍も刺したり斬ったりしてるのに全然死なない。おまけのラストは、女囚全員で明日に向かって走るという妄想全開な趣味もあり、再度書くがこれが正月映画というのがびっくりする。
そしてさそりの無言の存在感(本作の梶芽衣子は特別かっこいい)と双璧をなす、狂気のババアの暴れぶりも面白かった。さそりの妖艶な美しさとは真逆の憎々しさがよく出ていて、本作のテンションを最後まで保てた功労者だろう。演じた白石加代子という女優さん、その後舞台を中心に活躍し(狂気の女優というのがキャッチフレーズらしい。さすが。)、近年紫綬褒章まで受章されている。白石加代子さんきっかけで本作を見た人も、この狂気には満足出来たのではなかろうか。いや期待に違わぬきちがい映画だった。