Software Design 1993年3月号

特集は「どうする?UNIXの日本語環境」。数年後の日本でのPC-UNIXブームのときに筆者も遭遇した、文字コードも日本語入力の環境もてんでんばらばらの状況は当時から変わらなかったんだね。

日本語入力システムとしてWnnとSKKが取り上げられている。Wnn、懐かしいなあ。なお、Cannaはなぜかない。以前の号では取り上げられていた気がするけど。

 

Software Design 1993年2月号

特集は「UNIX + Macintosh ネットワーキング」。UNIXである今のmacOSとは異なり、当時のMacはUNIXともPC世界(当時は主にMS-DOS)とも異なる独自の世界だった(特にファイルフォーマット)。でもネットワーク環境は整っていたのでこのような特集が組まれたようだ。

NeXTSTEP 3.0がでたそうな。そこでちょっと引っかかったのがInterface Builderの変更点。3.0からProject Builderが登場したとのこと。というか、Project Builderのほうがあとだったんだね。

「重点企画Let’s Begin OOP」。OOPの特集だけど、扱っている言語はC++。今だともっとふさわしそうな言語があるような気がする。そういえばまだJavaは登場前なんだね。この号から「反C++論」の連載がスタート。

Software Design 1993年1月号

1993年最初の特集は「PC UNIXの現在(いま)」。Intel x86ベースで動くUNIX系OSの特集だ。取り上げられているのは以下の通り。

  • ESIX
  • SCO OpenDesktop
  • SVR4.2 JE
  • Mach386
  • PANIX
  • BSD/386
  • MachTen
  • 386BSD
  • 386BSD(PC-9801版)
  • Linux
  • Solaris for X86

もちろん注目はLinuxだろう。SD誌で本格的に取り上げられたのはこの号が初めて。とは言っても他のOSと比較して非常にあっさりとした記述となっており、まだまだLinuxブームとまでは行っていなかった模様。ただ記述によると、当時からすでに比較的安定して動作していたそうで、そのあたりが今に至るまで生き残った理由なのかも。

Software Design 1992年12月号

特集は「SVR4入門」。自分がUNIXを触り始めた頃(1997年ごろ)だとUNIXの系統としてSystem-V系とBSD系、という言い方よりは、SVR4系とBSD系という言い方のほうが多かった気がする。そのSVR4が登場したのがこの頃だったよう。System-VにBSDのいいところを取り入れたバージョンだったよう。あとは今ではおなじみの動的ライブラリの話や、オブジェクトファイルのフォーマットがSVR4からELFになったなど、今に繋がる話も入っている。

今につながる、といえば、Linuxという単語がおそらく初登場。386BSDとともにフリーなPC-UNIXとして米国で注目されている、というのはが記事の中にちらっと出てくる。ただしこの著者は「ただしこれらはネットワークでのユーザ自身によるサポートのみですから、主流には成らないだろうと私は推察しています」との意見。もちろん当時の状況ではこの推察となるのは当然だろうが。

1992年の1年分を振り返ると、表紙にある「UNIXとワークステーションの情報誌」という副題にある通り、UNIXを(サーバではなく)ワークステーションとして使うための記事(プログラミングも含む)がメインとなっていた。だがその後の歴史では、この当時からライバルとされていたWindows NTがPC側からUNIXワークステーションを飲み込み、この「ワークステーション」というカテゴリそのものが消滅したのは周知の通り。

Software Design 1992年11月号

特集は「基礎から学ぶUNIX」。改めてUNIXの使い方の基礎からということで、シェルやXの設定ファイルの話やデスクトップマネージャ(って初めて聞いた気がする)の話、電子メール入門など。時代柄、DOS環境との比較記事もある。

連載「ワークステーション徒然草」の今回のテーマは日本語入力環境のかんな。うん、聞き覚えがあるぞ。この頃(というか私がFreeBSDを触り始めたのはさらに5年後だけど)はXや日本語環境をどう整えるかがPC-UNIXの大きなテーマだった気がする。

あとはOODBMS入門という記事があった。これだけ読むとオブジェクト指向言語にピッタリの気がするけど、どうして普及しなかったんだろう(個人的にはRDBMSのほうが使いやすいし理解しやすいと思うけど、それはあくまで個人の感想なので)。

Software Design 1992年10月号

特集は「はじめてのUNIXシステム管理」。なんかやっと見慣れた記事になった気がする。アカウントやパーミッションの管理、バックアップなど今でもほぼ変わらない管理手順が並ぶ。このへんは進歩がないのか、最初から高い完成度の仕組みだったのか。

連載「平成こだわり倶楽部」の本号は「Shellの話」。昔はエディタと同じくらい好みのシェルの話があった気がするけど、最近はLinux + bashでほぼ固定になっているかなあ。まあ自分が触るマシンはOSセットアップ後に顧客納品するためのものだから、好みのシェルなんて使えないんだけど。

海外在住者がアメリカ事情を紹介する連載がいくつかあるんだけど、この頃はアメリカが不景気だという話で溢れている。この状況から新たな産業を起こして現在のように復活したアメリカの底力を今から振り返ると感じる。

Software Design 1992年9月号

特集は「夏にSPARC!SPARC新製品とSolaris2.0」。Sun陣営の新プロセッサ及びOSの特集だ。当時はSPARC搭載のUNIXワークステーションが松下や東芝からも出ていたのね。そしてSolaris 2.0。2.0といってもこれこそがいま自分たちが認識しているSolarisで、Solaris 1.0というのはそれまでのBSD系のSunOS 4.1をあとづけて読み替えただけのものだ。だから結局2.xの2は省略されて今は小数点部分がメジャーバージョンなのね。
個人的にはこういう特集記事の最後にまとめて紹介されているサードパーティ製ソフト・ハードの記事が好き。中身はともかくとして会社名と住所が書いているので、この会社はこのあとどうなったのか(合併?社名変更?)とかこの住所の場所には今何があるのかを勝手に想像するのが楽しい。全然本筋じゃないけど。ちなみに今回の記事で今も生き残っているプロダクトはMathmaticaくらいかな。

あと連載記事等を改めて眺めるとNeXTの記事ばかりだね。Wikipediaによると編集者の趣味らしいけど。このままNeXTがうまくいっていたら今の世の中はどうなっていたんだろう。

Software Design 1992年8月号

本号の一番のトピックは、なんと言っても「Internetをはじめよう」という記事だ。Wikipediaによると、一般のコンピュータ雑誌でインターネットを取り上げた最初の記事だったそうな。まだインターネットが一般開放される前だったので、インターネット=junetという扱いで記事が進んでいくのがおもしろい。ドメイン名取得のための問い合わせ先として日本ネットワークインフォメーションセンター(JNIC)の住所(東大大型計算機センター内)が載っていたりとか、今では考えられないのどかな記事だ。でもこれが今につながっていることを考えると感慨深い。

その他、特集が「ワークステーション=PCネットワーキング」だったり、BSD/386(1992年6月号で触れられていた386BSDとは別、後のBSD/OS)の記事があったりとか、今につながっていく技術が取り上げられている号だ。

Software Design 1992年7月号

本号の特集は「UNIXの表計算ソフトウェアの魅力」。この当時の特集は、UNIX機ワークステーションを次世代PCとして利用しようというものが多かった気がする。すでになくなっているものばかりだけど、知っているのはLotus1-2-3(のSPARK版)とアシストカルク(レビューしているのはアシストカルクGOLDというエディション)くらいかな。この記事で初めて、アシストカルクがアシスト社の開発ではなくて米国製ソフト「20/20」のローカライズだということを知った。へー、と朝の通勤電車で読みながら思っていると、会社でもちょうどその話題が出てびっくり(2020年と引っ掛けての話題だった)。自分の中でだけタイムリー。

もう一つの特別企画は「Xターミナル活用法」。いわゆるX端末ですな。今だとWindowsマシンのXサーバソフト(XmingとかMobaXtermとか)使う話になると思うけど、当時は専用のX端末がありましたな。大学の情報処理センターにもあったな(20年前の話)。

新連載が始まった。「OSF/1プログラミング入門」。記事の中でおおっと思ったのが「ファイルシステムとLVM」という節。LVMってこの頃出てきたのね。意外と古いんだ。

Software Design 1992年6月号

本号の特集は「簡単自慢!UNIXのGUI構築ツール」。先月号に引き続きX-Window上のGUI開発の話だ。前号がライブラリ中心の話だったのに対して、今回は開発ツール側の話。まあこのあたりはそういう時代だったよね以上の感想はないかな。。。

ちょっと気になった記事は「Cユーザのための実践的C++入門」という連載記事の冒頭部分。386BSDが出た、という話で、「プログラムに惚れ込んだ人というのは何をしでかすかわからないもので、先日IBM−PC用のフリーBSDを作ったやつがいる、というニュースが飛び込んできました。」という出だしから興奮が感じられる。SD誌で最初にPC-UNIXが言及された記事かも。386BSDが行き詰まってFreeBSDが登場したことを考えると、ここで書かれた「フリーBSD」が後の予言みたいでちょっと楽しい。

あとちょっとだけ仕事と関係があるのが、SPECのニューベンチマークセットがリリースされた、というもの。リリース番号は2.0で、評価基準がSPECint92とSPECfp92だそうな。仕事ではよくSPECint2006にお世話になっております。自分で計測しているわけじゃないけど。