ベスト盤

最近すごくない?何かって?え、いやあ、タイトルにある通り、ベスト盤のリリースラッシュですよ。9月末に出たストーンズの、決定盤とも言える内容の二枚組を皮切りに、筆者が確認しただけでも、90年代U2、ニルヴァーナ、ビョーク、デビッド・ボウイと、大物中の大物がこぞってベスト盤を出してる。ホフディランも活動休止にともなってベストを出したが、それなどかすんでしまうほど(ごめんなさい!)。何なのだろうか、一体。



まあ今の私の音楽ソースは新宿タワレコの視聴コーナーのみなので、もしかしたら私の知らない所で「みんなで仲良くベスト盤を出そう同盟」なるものがレコード会社間で組まれて、それが「ロキノン」なんかで特集されてるのかもしれない。表紙で目線の入ったレコード会社役員どもが握手してたり。



ただこういっぺんに出るとみんなとまどうのではないかね。上述のバンドの購買層は結構被ってるだろうに、もうちょっとタイミングとかをずらせばいいのに、と余計な心配までしてしまう。



とはいっても、洋楽初心者にとってこれはいい時期なのかもしれない。ホフディランはともかく(って別に彼らが嫌いなわけじゃないよ、っつうかむしろそこそこ好きだよ)、ほかのはいずれも「これは知らないとやばいでしょう」の部類に入るバンド/アーティストなので、洋楽に入るきっかけとしては申し分ないかと。誰かに、特に一定年齢以下の若者に「ニルヴァーナ?何それ?」なんて言われた日には、私はどうしたらよいのか全く分からなくなるので、そのような気まずい状況に私が置かれる可能性が少しでも減れば、それは非常に歓迎されるべきことである。



とか言ってる私は、おそらくどれも買わない。基本的にベスト盤を買うのは、そのバンドのほかの作品を買うつもりがハナっからない時に限られており(例えばフランク・ザッパやスパイダーズ)、上述の連中はそれにあてはまらず。ニルヴァーナの未発表曲は確かによかったけど、その1曲のためだけにアルバム1枚買えるかアホ。ってなるわけ。



ただ正直U2は結構惹かれます。だって初回限定でB面曲集がアルバム1枚分ついてるんだもん。しかもさらにライブ映像のDVDまでついてる始末。何かここまで気前がいいと逆にむかつく。まあ、でも買わないだろうね。同じくB面曲集がついてた80年代ベストの時も迷った挙げ句買わなかったし。そのうちB面曲集はB面曲集で、別アルバムとして出してくんねえかな。

梟の城 ★★★★☆

織田信長による伊賀忍討伐の生き残りである葛籠重蔵。時代は豊臣の世に移り、重蔵は俗世を離れて暮らしていた。そこに秀吉暗殺の依頼が来て、彼は依頼主の思惑を超越した、自己のための暗殺を決意する。一方同じく生き残りの伊賀忍風間五平は、忍者という隠密の殻を破ろうと、前田玄以に仕官していた。豊臣暗殺を狙う重蔵と、それを”豊臣臣下”として阻止する五平。対照的な両者を描く。
原作司馬遼太郎。ちなみにこれは直木賞受賞作らしい。原作は手元にあるがまだ読んでない。司馬作品はいくつかあるんだが、まともに読んだのは「竜馬がゆく」ぐらい。にしてもその面白さ、なにより分かり易さ・読みやすさはよくわかる。
膨大な数の人物が現れては消え、その把握がまず困難になりがちだが、司馬作品は人物が出てくるたびに前の状況をフィードバックすることはあまりなく、出てくるたびにそこで完結させる。なので周辺の人物関係にあまり執着することなく、しかもそういう自己完結的なほうが印象に残るので読みやすく感じるんだろう。
この映画はそういう原作に触れずに観た。重蔵と五平の他に主役級として女忍が二人登場するんだが、この女忍がイマイチパッとしない。重蔵以外の五平・女二人の背景を均等に描こうとしているので、ラストに壮絶な最後を遂げた五平を除く女忍二人はかなり印象が薄く感じる。それだけにもっと女忍を脇役に添えて、重蔵と五平の部分を厚くできればラストまでのストーリーがもっと観れたんじゃないかと思う。
それにしても凄いのはラス直前からラストまでの移ろい。重蔵が大阪城に忍び込む~五平の大花火、この辺までの緊迫感や話のつながりは面白い。五平バンザイ!っちゅう感じである。
終わりよければなんとやら、自分にはこの映画は面白い作品として原作を読むその時にフィードバックされるんだろう。

復活の日 ★★★★☆

1982年、人類は人類によるウィルスのために死滅した。世界中が廃墟と化す中、ウィルスが零度以下だと機能しなくなるという特性のために生きぬいたのは、南極にいた各国の調査団。人類の生き残りは彼ら八百余名だけである。人類は果たしてどうなるのか、スケールはやたらとでかい。
どうも自分には70~80年代のカドカワ映画が合うみたいだ。今のところ観た映画でハズレはない。まあそういう映画ばかり狙って観てるというのもあるが。最近も「リング」シリーズがヒットしたが、小説の映画化、そして時代の要求を刈り取る、こういうのは得意なんだろう。
それにしても、この映画はスタッフから演者までビックネームが連ねる。監督深作欣二、原作小松左京、撮影木村大作、音楽羽田健太郎、そして演者は、主役草刈雅雄、他の主役級はすべて外国人なんだが、脇役に緒方拳、渡瀬恒彦、千葉真一など、もうすごく豪華なんである。これだけの演者に先ほどのスタッフ、いい映画に仕上がるのが仕組まれてるような感あり、それに被さるは小説家の原作。万全である。外国人演者もかなり良くて、中には「人間の証明」のあの刑事もいる。
肝心のストーリーはしっかりした原作があるので面白い。しかも原作映画の必然であるハショリについては、この映画は2時間半をフルに使い、肝心な部分は遠回しで見せ、ハショれる部分はニュアンスで伝える、これも監督のなせる技で見てて間延びしない。
世に数ある大作のうちそれがポシャるか成功するかは、大作ゆえの自己主張がいかに押さえられるかという点も大きいと思う。この映画では主人公をヨシズミ(草刈雅雄)にしぼり、名優を名脇役として花を添えてもらう、後はスタッフが仕上げる、こういう連携のなせる技でかなり面白かった。ラスト、「Life is ・・・・・・」これがくるとわかっていても感動してしまう、これは面白いという証拠だ。
ただいかんのが、日本映画だけども外国映画ともいえる外国人演者の多さ、それに伴う字幕の多さ、その字幕がメチャクチャ見づらく、これはどうしようもなかった。そんな戸田奈津子系字幕係に-1。